メディアの基本情報|データ復旧
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目次
スマートフォン・タブレットの構造について|データ復旧
普段何気なく使っているスマホですが、内部の構造を見る機会はそう多くないと思います。スマートフォン・タブレットの中には様々な部品があり、それぞれ違った役割があります。ここでは、スマホがどういった部品で構成されていて、どのような機能があるのかをご紹介します。
基本構造
ディスプレイ画面
スマホの部品の中で一番目にする機会の多い、映像表示装置兼入力装置です。表面に見える保護ガラスの下には入力用のタッチパネルセンサー、出力用ディスプレイと続き、指紋センサーが埋め込まれているものもあります。従来、表示用装置としては液晶ディスプレイ(LCD)が主流でしたが、ハイエンド・フラッグシップモデルを中心に有機ELディスプレイ(OLED)に移行しつつあります。
TFT液晶ディスプレイ
液晶ディスプレイではバックライト(LED)を使用して光を供給し、液体と結晶の性質を持った液晶分子の配列を変えることで光の透過を制御します。これにより、各ピクセルの明るさや色が調整され、最終的に画像が表示されます。
アクティブマトリクスOLED(AMOLED)
有機ELディスプレイは有機発光ダイオードという各ピクセルが自ら発光するため、LEDバックライトが不要です。これにより、より薄型で高コントラストな映像出力が可能になります。
表面ガラス
表面の強化ガラスはアルカリアルミノシリケートガラスと呼ばれるもので、スマートフォン登場当初と比べるとすでに数倍の強度を有しています。しかしながら、年々薄型化・軽量化を求められてもいるため、素材自体の進化に反して落下による破損耐性という点では進化が見えづらくもあります。
Gorilla Glass、Gorilla Glass 2、Gorilla Glass3、Gorilla Glass4、Gorilla Glass5、Gorilla Glass6、Gorilla Glass Victus、Gorilla Glass Victus 2、Gorilla Glass 7i、Ceramic Shield、サファイアガラス
タッチパネル
投影型静電容量方式
スマホやタブレットで一般的に使用される方式です。パネルには電気を通す金属膜が貼られ、X極とY極の電極が配置されています。指がパネルに触れると、電気が指に移動し、電圧変化を検知してタッチ位置を認識します。マルチタッチに対応し、フリック入力やスワイプ操作も可能ですが、手袋を着けていると反応しません。
抵抗膜方式
初期のスマホやカーナビなどで使用されていた方式です。ガラス基板に2枚の電極膜を向かい合わせに設置し、その上にフィルムを重ねた構造です。指でタッチすると電極膜が重なり通電し、電流の発生場所を検知してタッチ位置を特定します。手袋を着けていても操作可能ですが、視認性が悪く、マルチタッチには対応していません。
電磁誘導方式
専用のペンで画面をタッチすると、磁界の変化により電気が流れる「電磁誘導」を利用した方式です。パネル側に設置されたセンサーが反応して位置を検出します。筆圧まで検知できる高精度な方式ですが、専用ペン以外では操作できません。
バッテリー
スマートフォンのバッテリーは主にリチウムイオン電池が使われています。リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を持ち、軽量で長寿命という特長がありますが、過充電や高温に弱いため、適切な管理が重要です。リチウムイオン電池には「自己放電」という特性があり、使用していない状態でも電池の容量は徐々に減ってしまいます。 過放電の状態が長く続くと、電池の負極に用いられている銅箔が溶け劣化を促し、最終的には充電できない(電源の入らない)状態にまでなってしまうこともあります。
基板・基盤
マザーボード・ロジックボードとも呼ばれ、総称して一つの部品としてカウントされることもありますが、実際には0.25×0.125×0.125mmという極小サイズの部品などが少なくとも数百~1,000点以上も実装された超複合部品です。通常これらすべての部品を総称してまとめて基板と呼ばれています。電源管理IC、Wi-Fiモジュール、セルラーモデム、Bluetoothモジュール、加速度センサーとジャイロスコープ等々多種多様な半導体部品・集積回路の中には替えの効かない部品も多く、まさにスマートフォンそのもの、データそのものとも言える主たる部品です。
プロセッサ(CPU)
パソコンでいうCPUに当たる部品で、スマホの性能を決めうる主たる部品ですが、実際にはGPUやモデム、メモリ(RAM)とも一体となったSoC(System on a Chip)という複合的な部品です。基板上に直接実装されており、基本的に交換することはできません。
Qualcomm Snapdragon
特徴: 高性能でバランスの取れたSoC。ハイエンドからローエンドまで幅広いラインナップがあります。
代表モデル: Snapdragon 8 Gen 2、Snapdragon 7 Gen 1
Apple Aシリーズ、Mシリーズ
特徴: Apple 専用のSoCで、非常に高いパフォーマンスと効率を誇ります。
代表モデル: A17 Bionic、A16 Bionic
MediaTek Dimensity
特徴: コストパフォーマンスに優れたSoC。特にミドルレンジからハイエンドのスマートフォンに多く採用されています。
代表モデル: Dimensity 9200、Dimensity 8100
Samsung Exynos
特徴: サムスン製のスマートフォンに多く採用されているSoC。ハイエンドからローエンドまで幅広いラインナップがあります。
代表モデル: Exynos 2200、Exynos 2100
Google Tensor
特徴: Google Pixelシリーズ専用のSoC。AIや機械学習に特化した機能が特徴です。
代表モデル: Tensor G3、Tensor G2
HiSilicon(Huawei) Kirin
特徴: Huaweiのスマートフォンに採用されているSoC。高性能ですが、最近は供給が制限されています。
代表モデル: Kirin 9000、Kirin 990
メモリ(ストレージ)
OSの他、ダウンロード・インストールしたアプリ、撮影した写真や動画などデータそのものを記憶・保持しておくためのNANDフラッシュメモリでできた記憶装置。フラッシュメモリは、電源を切ってもデータが失われないという特性を持つ半導体メモリのことで、SD カードやUSB メモリ、SSD 等などにも使われています。ただし、スマートフォンにおいては基板上に直接取り付けられており、いわゆるパソコンの内蔵 HDDのように取り外したり交換することはできません。
現行のストレージメモリはAndroidOS, iOSからのTrim機能に標準で対応しているため、バックグラウンドでのガベージコレクション(Garbage Collection)の働きにより削除されたデータはほとんどただちに完全消去されます。そのため、削除したデータ・初期化したデータの復旧は基本的に不可能となります。
eMMC(embedded Multi Media Card)
ストレージの規格の一つで、フラッシュメモリを利用した記憶装置のことです。NAND型フラッシュメモリと読み書きを制御するコントローラーがひとまとめになった構造で、主に組み込み機器向けに使用されています。携帯電話の他、カーナビ、産業用/組み込み用PC、デジタルサイネージ等にも使用されます。
UFS(Universal Flash Storage)
フラッシュメモリを利用した小型の記憶装置で、eMMCと同様に基板に直接取り付けられています。
シリアルインターフェースを採用し、全二重通信を用いているため、ホスト機器との間でのリード・ライトの同時動作が可能です。パラレルインターフェースのeMMCよりも高速なデータ転送速度を実現し、消費電力も少ないため、近年より多くのモデルで採用されています。
カメラ
多くのスマートフォンにはインカメラとリアカメラが備え付けられています。
インカメラ(フロントカメラ)
ディスプレイ上部に設置されていることが多く、フロントカメラ単独で部品となっているものとセットで赤外線センサーや近接センサー、環境光センサーなど複数の部品がまとめてモジュール化されているケースがあります。
リアカメラ(アウトカメラ)
アウトカメラには複数のレンズが搭載されているものもあります。広角、超広角、望遠、マクロなど、複数のレンズを適宜切り替えることでさまざまな撮影モードに対応しています。4800万画素や一億画素など高画素化するにつれて、処理に求められるRAMやストレージのサイズも大容量化しています。
生体認証
iPhone のFace IDやTouch IDで知られる顔認証や指紋認証の他、超音波式の画面埋没型の指紋センサーや虹彩認証もあります。赤外線センサーやドットプロジェクターを使用して顔の3Dマップを作成できる顔認証では、高い精度とセキュリティを提供し、暗所でも動作します。
Face ID
Touch ID
セキュリティチップ
OSとセキュリティの仕組み
スマートフォンのOSにはハードウェアと一体となった強固なセキュリティの仕組みが組み込まれており、第三者から大切なデータを守るための万全の備えが何重にも施されております。
Androidの暗号化の仕組み
Android 6 以降のスマートフォンでは標準で暗号化機能が組み込まれており、ユーザー側で個別に暗号化の設定をしなくても自動的にすべての個人データが保護されています。
フルディスク暗号化(FDE:Full Disk Encryption)
Android 4.4 で導入されたストレージ全体を暗号化する方式です。出荷時のバージョンが Android 9 までの端末で利用可能でしたが、Android 13 以降のデバイスでは完全に廃止されています。
ファイルベース暗号化(FBE:File-based encryption)
Android 7.0 以降でサポートされ、出荷時のバージョンがAndroid 10 以降の端末では標準で有効化されています。FDEとは異なり、ディスク全体ではなくファイル単位で暗号化を行う仕組みで、仮に100個のファイルがあれば暗号化キーも100個存在します。この方式のおかげで暗号化解除前であっても画面ロックの解除前にも着信や通知を受け付けたりといくつかの基本的な機能を使用できるようになりました。
これらの暗号化を解除するための復号キーは、ストレージ内に単一のファイルとして存在しているわけではなく、キー自体にさらに暗号化を施された上で主にハードウェア(場合によっては専用ハードウェア)内に格納されています。
iPhone(iOS)の暗号化の仕組み
iPhone 3GS, iOS 4以降の端末でハードウェアベースの暗号化が導入されました。メールやSafariの履歴などの一部データに暗号化が施されています。iOS 8 以降のiPhoneではすべて暗号化がされており、製造元である Apple でさえ、パスコードで保護されたユーザーデータには一切のアクセスができなくなりました。
ファイルベースの暗号化方式が用いられており、iPhone 5s以降のモデルでは Secure Enclave という専用のセキュリティチップ上に生体認証情報や暗号鍵が保管されています。
これら強力な暗号化の仕組みが施された状態で、スマートフォンを初期化するとユーザーファイルのみならず復号のための解除キーごと消去してしまうため、事実上個別にファイルを復元することが不可能となります。これは「暗号化消去(Cryptographic Erasure)」と呼ばれる NIST(米国立標準技術研究所)にも準拠した確実にデータを復元不可能にするための消去方式です。信頼性の高さから世界中の政府機関でも採用されています。