HDDの異音(カチカチ、ブーン等)

HDDから通常とは異なる音(カチカチなど)が発生し、パソコンで認識されなくなることがあります。これは、HDD内部のパーツが正常に動作せず、異常音を発している状態です。異音の種類によって、HDD内部で発生している障害の内容が異なることがあります。ここでは、異音が発生する原因と、その音が何を意味するのかについて詳しく解説します。

HDDの動作

HDDは、複数の重要なパーツで構成されています。内部にはデータを保存するプラッタと呼ばれる円盤があり、これを回転させるスピンドル・モーター、データを読み取る磁気ヘッド、その磁気ヘッドを動かすアームが含まれています。プラッタの表面にはデータを記録するために磁性体が塗布されており、スピンドル・モーターによってプラッタが回転することで、磁気ヘッドがその表面を移動しながらデータの読み書きを行います。

これらの部品のうちどれか一つでも正常に動作しなくなると、データの読み書きが正常に行えなくなります。また、部品の故障により、異音が発生することもあります。さらに、故障するパーツによって異音の種類が異なることもあります。

HDDの構造

HDDの異音の種類

  • ウィーン
  • カタカタ
  • カチカチ
  • カリカリ
  • ガリガリ
  • キュッキュッ
  • キュルキュル
  • ジー
  • ジジジ
  • ピーピー
  • ピッピッピッ
  • ブーン

アームの故障

磁気ヘッドの故障には「ヘッドクラッシュ」と呼ばれる現象があり、これは磁気ヘッドが損傷し、正常にデータの読み書きができなくなる状態を指します。HDDは、高速回転するプラッタ上に記録されたデータを、磁気ヘッドが極めて狭い隙間から読み取る仕組みになっています。この磁気ヘッドが曲がったり、位置がずれたりすると、プラッタに接触し、「ジャリジャリ」としたこすれる音や、物を削るような音が発生します。ヘッドクラッシュが起きたまま通電を続けると、データが保存されているプラッタに傷がつき、データが損失する危険性が高まります。

アームはサーボ情報を読み取って磁気ヘッドを制御し、データを読み込む役割を担っていますが、劣化によりサーボ情報の読み取りができなくなると、アームは自身がプラッタ上のどこに位置しているのかを判断できなくなり、正常な駆動範囲を超えて動作してしまうことがあります。

アームの隣には、アームの可動範囲を制限するストッパーがあり、本来ならこのストッパーに軽く触れる程度で稼働するのが正常です。しかし、故障によりアームが異常な動作をすると、ストッパーやHDDケースの内側に強くぶつかり、「カコンカコン」といった異常音を発することがあります。この状態が続くと、最終的に磁気ヘッドが損傷し、プラッタに傷がつくなど、状況がさらに悪化してしまう可能性があります。

スピンドル・モーターの故障

回転を続けるプラッタの中心部分は、摩擦を軽減するために「軸受」という部品で支えられています。かつてはボールベアリング(玉軸受)が使用されていましたが、現在では主に流体軸受が採用されています。流体軸受は、ボールベアリングに比べて劣化に強いものの、長期間の使用や温度変化によってダメージが蓄積し、摩擦が増加してモーターの回転がスムーズでなくなることがあります。

通常、モーターが回転を開始すると徐々に音が大きくなり、一定の速度に達すると動作音が安定します。これを「スピンアップ」と呼びます。しかし、軸受が劣化すると、正常なスピンアップができず、動作が不安定になり、モーター音が大きくなった直後に再び小さくなるといった不規則な動作音が発生します。

さらに、長時間通電しない場合、軸受に使用されているオイルの粘度が上がり、回転抵抗が増加することもあります。その結果、スピンアップが正常に行われず、異音が発生することがあります。

HDD自体が異常を検知した場合

一部のHDDには、基板上に小型スピーカーが搭載されており、異常を検出した際にピーピーやプープーといったビープ音を発する仕組みがあります。このビープ音が鳴る場合、多くの場合はHDDが正常に動作していない状態を示しています。たとえHDDがまだ稼働していても、異常を検出した状態で無理に使用を続けると、さらなるダメージを引き起こす可能性があるため、速やかに使用を中止することが重要です。

モーターの故障・電源の故障

HDDに通電しているにもかかわらず、まったく音が聞こえないことがあります。通常であれば、モーターがプラッタやアームを動かすため、何らかの動作音が発生するはずです。しかし、完全に無音の場合、モーターが故障しているか、モーターに電力を供給する回路に問題が生じている可能性があります。

HDDの異音の原因

HDDから発生する異音は、内部の深刻な故障や部品の異常を示していることが多く、その原因は多岐にわたります。一般的に、異音はHDDの内部部品、特に磁気ヘッドやプラッタの異常動作によるものです。例えば、HDDが落下や転倒による物理的ダメージを受けた場合、通電中であれば、磁気ヘッドがプラッタに接触し、致命的な損傷を引き起こすことがあります。

この接触により、プラッタ上の記録用磁性体が削られ、データが失われるだけでなく、削れた磁性体がフィルターに詰まることで、さらなる損傷が発生するリスクもあります。ただし、ノートパソコン用のHDDは、稼働中の落下への対策がされています。一部のHDDには加速度センサーが搭載されており、落下を検知した瞬間に磁気ヘッドを自動的にプラッタ上から退避させる仕組みがあります。これにより、ヘッドとプラッタの接触による故障を未然に防ぐことができます。

また、HDDの経年劣化により、磁気ヘッドが正しく動作せず、プラッタと接触して異音を発生させるケースもあります。これにより、データの読み取りが困難になり、最悪の場合、データ復旧が不可能になることもあります。HDDが高温環境で稼働すると、部品が変形したり、異常動作や軸受の劣化が発生しやすくなり、故障のリスクが高まります。

特に、パソコンや外付けHDDケースの通気口がホコリで詰まっていたり、冷却ファンが故障していたりすると、内部の熱が逃げ場を失い、室温よりも20度以上高くなることがあります。一般的に、HDDの推奨動作温度は50度以下とされており、これを超える環境で長期間使用すると、故障のリスクが著しく増加します。

異音の原因は、部品以外にも不良セクタやファームウェアの異常など、HDD内部のソフトウェア的な要因によることもあります。不良セクタが増加すると、磁気ヘッドが正しくデータを読み取れず、アームが繰り返し動作することで「カチカチ」という音が発生します。また、ファームウェアに問題がある場合も、同様の異音が発生することがあります。

このように、HDDからの異音は、内部部品の物理的な故障やソフトウェア的な異常が原因となっており、異音が発生した時点で既にHDDは深刻な状態にある可能性が高いです。したがって、異音を確認した場合は、HDDの使用を直ちに中止し、適切な対応を検討することが重要です。

HDDから異音が発生した場合の対処方法

HDDから異音が聞こえた場合、即座に適切な対処が求められます。異音が発生する原因は、HDD内部の物理的な損傷や故障の前兆である可能性が高く、放置するとデータの損失が避けられません。また、電源を入れることでデータ障害がさらに広がる可能性が高いです。以下の3つのシチュエーションに応じた対処法をご紹介します。

  1. パソコンがまだ起動できる場合
     まず最優先すべきはデータの保全です。異音が発生している間でもデータの読み書きが可能であれば、直ちにすべての重要なデータを別のドライブや外部ストレージにバックアップしてください。その後、可能であればHDDをSSDに交換するもしくはパソコンそのものを買い替えた方が良いかもしれません。
  2. データに破損が見られる場合
     この場合、データ復旧を最優先に行う必要があります。物理的なデータ障害が発生していますので、専門業者に依頼することがおすすめです。復旧が完了した後、バックアップを取り、HDDの交換やパソコンの買い替えを検討してください。
  3. パソコンが起動しない場合
     自己対応は危険を伴うため、データの損失を防ぐために、すぐに専門業者に修理やデータ復旧を依頼しましょう。業者による対応が可能であれば、復旧後にバックアップを行い、HDDの交換や新しいパソコンの購入を検討してください。ただし、既に修理不可能な場合もあり、その場合は本体交換となります。

重要な注意点

異音が発生した時点でHDDの状態は既に悪化している可能性が高く、使用を続けることでプラッタが傷つき、データ復旧が困難になるリスクがあります。異音が発生したら、即座に使用を中止し、専門家に相談することが最善の方法です。状況に応じた適切な対処を行い、大切なデータを守るために迅速な対応が求められます。

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