フロッピーディスクについて

フロッピーディスク(floppy disk)は、かつて広く使用されていたデータ記憶媒体で、柔軟な磁性ディスクにデータを記録する媒体です。一般的には「5.25インチFD」や「5インチFD」というように「サイズ+FD」の名前で呼ばれています。磁気記録媒体として非常に構造が単純で大きな違いがサイズだからだと思われます。

フロッピーディスク(FD)の種類

フロッピーディスクにはいくつかの種類があり、それぞれが異なる物理的特性とデータ容量を持っています。ここでは、主要なフロッピーディスクの種類について解説します。

サイズ 容量 用途 特徴
8インチ 80KB~1.2MB 初期のコンピュータシステム 大型ディスクドライブ、1970年代~1980年代にかけて主流
5.25インチ 160KB~1.2MB パーソナルコンピュータの普及期 初期のIBM PCで広く使用、柔軟で壊れやすいケース、データ容量が増加
3.5インチ 720KB~1.44MB (HD) 1980年代後半~2000年代初頭 硬質プラスチックケース、スライディングメタルシールド、コンパクトで持ち運びやすい
2インチ 720KB ポータブルデバイス(例:Zenith Minisport) 非常に小型、持ち運びが容易
3.5インチ (2.88MB) 2.88MB 一部の高性能システム 高密度ドライブと互換性がなく普及しなかった

8インチフロッピーディスク

8インチフロッピーディスクは、初期のコンピュータシステムにおけるデータ記憶媒体として使用されました。サイズは8インチ(約203ミリメートル)で、容量は80KBから1.2MBに及びます。このディスクは、商業的に成功した最初のフロッピーディスクであり、大型のディスクドライブを必要としました。そのため、デスクトップPCにはあまり適していませんでしたが、1970年代初頭から1980年代にかけて広く普及しました。


5.25インチフロッピーディスク

5.25インチフロッピーディスクは、パーソナルコンピュータの普及期に広く使用されました。サイズは5.25インチ(約133ミリメートル)で、容量は160KBから1.2MBです。このディスクは、初期のIBM PCおよび互換機で広く使用されました。柔軟で壊れやすいケースに収められており、データ容量と信頼性が8インチディスクよりも向上しました。


3.5インチフロッピーディスク

3.5インチフロッピーディスクは、1980年代後半から2000年代初頭にかけて主流となりました。サイズは3.5インチ(約90ミリメートル)で、容量は720KBから1.44MB(高密度ディスクの場合)です。このディスクは、硬質プラスチックケースに収められており、耐久性が向上しています。スライディングメタルシールドによって磁性面が保護され、コンパクトで持ち運びやすいのが特徴です。高密度(HD)ディスクは1.44MBの容量を持ち、ほとんどのパーソナルコンピュータで標準的に使用されました。


2インチフロッピーディスク

2インチフロッピーディスクは、一部のポータブルデバイス(例:Zenith Minisport)で使用されました。サイズは2インチ(約50ミリメートル)で、容量は720KBです。このディスクは非常に小型であり、主にポータブルコンピュータ向けに設計されました。容量は少ないですが、持ち運びの利便性が高いのが特徴です。


2.88MBフロッピーディスク

2.88MBフロッピーディスクは、標準的な3.5インチフロッピーディスクと同じサイズで、容量を2.88MBに倍増させたものです。一部の高性能システムで試験的に使用されましたが、高密度ドライブと互換性がないため、普及しませんでした。


フロッピーディスクにはさまざまな種類があり、それぞれが異なる時代と用途に応じて利用されてきました。データ容量や物理的な特性の違いは、使用されるコンピュータの進化とともに変化し、最終的にはより先進的な記憶媒体に取って代わられました。

フロッピーディスクの開発者

アラン・フィールド・シュガート(Alan Field Shugart)

フロッピーディスクの開発は、1970年代初頭にIBMのアラン・フィールド・シュガート(Alan Field Shugart)とそのチームによって行われました。シュガートは、IBMのメンバーとしてデータ記憶媒体の改良と革新に取り組んでいました。彼のリーダーシップの下で開発された8インチフロッピーディスクは、商業的に成功した最初のフロッピーディスクとなり、コンピュータ業界に大きな影響を与えました。


フロッピーディスクの開発経緯

1971年、IBMのサンホセ研究所でアラン・シュガートと彼のチームが、8インチフロッピーディスクを発表しました。このディスクは、IBMのSystem/370メインフレームコンピュータのためのブートストラップローダーとして設計されました。当初の目的は、システムの起動プロセスを簡素化し、信頼性を向上させることでした。シュガートのチームには、デビッド・L・ノーブル(David L. Noble)などの重要なメンバーも含まれていました。


その後の発展

8インチフロッピーディスクの成功に続いて、IBMおよび他の企業は、フロッピーディスクのサイズを小型化し、データ容量を増加させるための研究開発を続けました。1976年には5.25インチフロッピーディスクが登場し、1980年代にはさらに小型で高容量の3.5インチフロッピーディスクが普及しました。これらの発展により、フロッピーディスクはパーソナルコンピュータの標準的なデータ記憶媒体となり、データの交換や保存が容易になりました。


フロッピーディスクの影響

フロッピーディスクは、その後のデータ記憶技術の発展に多大な影響を与えました。USBフラッシュドライブや外付けハードドライブ、さらにはクラウドストレージといった現代のデータ記憶技術の基礎を築いたのは、フロッピーディスクの革新と成功でした。アラン・シュガートとそのチームの功績は、今日のコンピュータ技術の進歩において重要な位置を占めています。


シュガートアソシエイツの設立

シュガートアソシエイツ(Shugart Associates)は、アラン・シュガート(Alan Shugart)によって1973年に設立されたコンピュータストレージデバイスの製造会社です。アラン・シュガートは、IBMでフロッピーディスクの開発を主導した経験を持ち、彼の名を冠したこの会社は、ディスクドライブ技術の革新と発展に大きな役割を果たしました。

シュガートアソシエイツの概要

設立: 1973年
創業者: アラン・シュガート(Alan Shugart)
所在地: カリフォルニア州サニーベール(Sunnyvale, California)

シュガートアソシエイツは、設立当初からコンピュータストレージ市場において重要な位置を占めていました。特に、5.25インチフロッピーディスクドライブの開発で知られており、この製品はパーソナルコンピュータの普及に大きく貢献しました。日本での販売はパナソニック(松下グループ)と提携し、FDD製品を多く製造しました。

主要な製品と技術革新

5.25インチフロッピーディスクドライブ:
シュガートアソシエイツは、世界初の5.25インチフロッピーディスクドライブを開発しました。このドライブは、パーソナルコンピュータ向けに設計され、柔軟なディスクを使用してデータを保存する技術を実用化しました。これにより、より小型で安価なディスクドライブが市場に登場し、広く普及しました。

ハードディスクドライブ:
シュガートアソシエイツは、フロッピーディスクドライブだけでなく、ハードディスクドライブの開発にも注力しました。これにより、大容量のデータ記憶が可能となり、商業用途および産業用途での需要が高まりました。

経営の変遷と買収

1980年代初頭、シュガートアソシエイツは買収の対象となり、当初はXeroxによって買収されました。これにより、同社の技術とノウハウが他の企業によって活用されることとなりました。しかし、シュガート自身はXeroxの経営方針に満足せず、1980年代半ばに会社を去り、シュガートテクノロジー(現在のシーゲート)を設立し、新たな挑戦に向かいました。しかしながら、商標の侵害の警告を受けたため、シーゲート・テクノロジーに改称しました。シーゲートテクノロジーではST-506型のHDDを販売開始するなど、現在でも残存する数少ないHDDメーカーとなっています。

シュガート・アソシエイツのフロッピーディスク用のインターフェイスを流用し、それが標準化され「SASI(Shugart Associates System Interface、サジー)」規格となっています。

シュガートアソシエイツの影響

話が脱線してしまったので、戻しますが、シュガートアソシエイツは、ディスクドライブ技術の発展に多大な貢献をしました。特に、5.25インチフロッピーディスクドライブの普及は、パーソナルコンピュータの利用を一変させ、データの保存と交換がより手軽で便利になりました。また、同社の技術革新は、後続のディスクドライブメーカーやストレージ技術の発展にも影響を与えました。

アラン・シュガートのビジョンとリーダーシップの下で、シュガートアソシエイツはストレージ技術の歴史において重要な位置を占める存在です。

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