HDD(ハードディスク)とSSDの違い
HDD(ハードディスク)はパソコンにとってなくてはならないデータ保存メディアです。しかしながら、SSDが登場したことによってその座は脅かされています。実際にはまだHDD搭載のパソコンも出荷されています。HDDからSSDに主なデータ保存先が変わってきたことによって発生するトラブルも変わってきました。
このページではデータ復旧の専門家としてHDDとSSDの構造の違いから、発生する故障、削除したファイルやデータに対して全く異なることなどをご紹介いたします。
1. 構造の違い
- HDD
- 構造: 主に金属製のディスク(プラッタ)に磁気でデータを記録し、ディスクが高速回転することで読み書きをします。
- 影響: 機械的な故障(プラッタの損傷、アクチュエータアームの故障など)によってデータ復旧が必要になることが多いです。物理的損傷からの復旧は専門設備(クリーンルームやクリーンベンチ)が必要ですが、論理的損傷からの復旧は専門設備がなくとも可能です。
- HDD(ハードディスク)の構造
- SSD
- 構造: フラッシュメモリチップにデータを保存し、電子的に読み書きします。
- 影響: 電子部品の故障(コントローラの故障、NANDフラッシュメモリの劣化など)が主な原因となることが多いです。データが均等に分散されているため、特定のブロックが壊れると全体のデータ復旧が困難になる場合があります。
- SSDの構造について
2. 物理的な故障原因の違い
- HDD
- 主な故障原因: 物理的な損傷(落下や衝撃)、摩耗、磁気的な損傷が多いです。
- 復旧可能性: 物理的損傷の場合、専門的なクリーンルームが必要になるが、論理的損傷の場合はソフトウェアでの復旧が可能です。
- SSD
- 主な故障原因: 電気的な故障、メモリセルの劣化、ファームウェアの問題が多いです。
- 復旧可能性: 電気的な故障やファームウェアの問題は復旧が難しく、専門的な知識と技術が必要です。劣化したメモリセルのデータ復旧は技術力のある専門家であっても困難です。
3. データ書き込みと消去の特性
- HDD
- 書き込み/消去: 書き込みと消去が比較的簡単です。削除されたデータは上書きされるまで復旧が可能です。
- 復旧の難易度: 削除されたファイルやパーティションの復旧は軽度障害に分類されることが多いです。HDDが認識しない、異音がする場合などの物理障害となり、難易度が非常に高いです。
- SSD
- 書き込み/消去: ウェアレベリング技術により、データが均等に書き込まれます。TRIMコマンドにより、削除されたデータが即座に消去されることがあります。
- 復旧の難易度: TRIMコマンドが有効な場合、HDDとは異なり削除されたデータの復旧が非常に困難となります。
項目 | HDD | SSD |
---|---|---|
主な故障原因 | 物理的損傷、摩耗、磁気的損傷 | 電気的故障、メモリセル劣化、ファームウェア問題 |
復旧可能性 | 物理的損傷は困難、論理的損傷は比較的簡単 | 電気的故障やファームウェア問題は難しい、メモリセル劣化は困難 |
書き込み/消去 | 削除データの復旧が比較的簡単 | TRIMコマンドにより削除データの復旧が困難 |
復旧手法 | クリーンルームでの物理的修理、専用ソフトウェア | 専門技術と機器が必要、コントローラやファームウェアの問題解決 |
費用 | 物理的復旧は高額、論理的復旧は低コスト | 高度な技術が必要なため高額になることがある |
データ復旧技術が高いサービスを提供しているのであれば、SSDであれ、HDDであれ対応することが可能です。理論上、復元不可能なものも存在します。
Trimコマンドとは
磁性体を帯びたプラッタを使用するハードディスクとは異なり、SSDは記憶領域としてNAND型フラッシュメモリを使用します。SSDの特性として、データを書き換える際に既存データに直接上書きすることができない点があります。また、データの消去は、数百KBから数MBの大きさを持つ「ブロック」単位でしか行えません。
そのため、わずかなデータの書き換えでも、ブロック単位での操作が必要となります。空きブロックが不足している場合には、以下のような手順が必要になります。
- 書き換え対象のブロック全体を一時的にバッファに退避
- バッファ上でデータの書き換えを実行
- 元のブロックを完全に削除
- バッファから元のブロックにデータを書き戻す
このように、SSDはハードディスクとは異なる特性と手順によりデータの書き換えを行います。
この(3)の完全削除の作業には一定の時間がかかるため、データの書き換え量が少なくても、SSD内部では多くの作業が発生します。その結果、急激な速度低下や深刻なエラーに繋がる可能性があります。
これに対する対策として「Trimコマンド」があります。Trimコマンドは、SSDの優れたアクセス速度を維持するために、事前に空きブロックを確保する命令です。Trimは「刈り込んで整える」「手入れする」という意味を持ち、これによりSSDのパフォーマンスが低下するのを防ぎます。
Trimコマンドが有効な場合、SSDが搭載されたPCで、対応するOSがインストールされていれば、自動的に作動します。ファイルを削除すると、元のブロックデータが完全に消去され、あらかじめ空きブロックが確保されます。これにより、データ書き込みとブロック消去が同時に発生する可能性が低くなり、速度低下を防ぐことができます。
Trimコマンドが実行されている場合のデータ書き換え手順は以下の通りです。
- 書き込み済みブロックの中から、書き換え対象以外のデータを別の空きブロックにコピー。
- 書き換え対象部分が空き領域となり、そこに新しいデータを追記。
- 元のブロックと新しいデータが書き込まれたブロックのアドレスを入れ替え。
- 元のデータが入っていたブロックは後で自動的に消去。
この手順により、SSDのパフォーマンスを最大限に維持しつつ、効率的にデータの書き換えが行われます。
不要なデータが書き込まれたブロックの完全削除は後回しにされるため、時間のかかる消去プロセスを省略し、高速に書き換えが完了します。データを削除した際にも、不要になったデータ領域は自動的に完全消去されます。
しかし、これらの操作はSSDのコントローラーチップによって自動的に行われるため、誤ってデータを削除してしまうと、後から気付いてもデータの痕跡が残っておらず、復旧が不可能な状態になることがあります。SSDが標準搭載されているPCがほとんどであるため、データを削除する前に、バックアップが適切に行われているかを確認することが重要です。
データ復旧事例
まとめ
SSDはHDDに比べて非常に高速ですが、容量は少なめです。そのため、OSなどの読み書き速度を上げたい場合はSSDを使用し、写真や動画などの大容量データはHDDに保存するのがお勧めです。録画したテレビ番組などはHDDに保存することで、コストパフォーマンスを高め、効率的に利用できます。また、ハイブリッドHDD(SSHD)もよく利用されていました。ハイブリッドHDDはSSDとHDDの両方の特性を持ち、頻繁にアクセスするデータを高速なSSD部分に保存し、その他のデータを大容量のHDD部分に保存することで、速度と容量のバランスを取ることを可能にしています。