UPS

知っておきたいパソコン基礎知識

UPSを導入して、不測の事態に備えましょう

UPS(無停電電源装置)は、停電や断線などの電源トラブルが発生した際に、電力を供給するための装置です。英語では 「Uninterruptible Power Supply」 の略称で、日本語では「無停電電源装置」と訳されます。

UPSは主に商用電源から電力を受け取り、それをバッテリーに蓄電します。そして、万が一の停電時には、自動的に蓄えた電力を機器に供給し、電源の途絶を防ぎます。この特性から、24時間稼働が求められるコンピュータや通信機器をはじめ、クリーンルーム、溶鉱炉の制御装置、発電所、航空管制塔などの重要インフラでも広く活用されています。

UPSがない場合、突然の停電によって機器が即座に停止し、業務に大きな支障をきたす可能性があります。しかし、UPSを導入すれば、このような電源トラブルによるリスクを軽減し、安定した運用を維持することができます。不測の事態に備え、UPSの導入を検討しましょう。このページではUPSについて詳しく解説いたします。

UPSの歴史

UPS(無停電電源装置)は、古くからその需要が存在しており、太平洋戦争以前にはすでに通信用途で実用化されていた記録が残っています。日本国内においては、太平洋戦争後の鉄道の近代化に伴い、本格的に需要が拡大したとされています。鉄道車両内で電気機器を使用するために、発電機や蓄電装置が搭載され、用途に応じたさまざまな電源装置が開発されてきました。

開発初期には、大規模な電源供給には「回転型無停電電源装置(ロータリーUPS)」が用いられていました。この装置はフライホイール(はずみ車)と呼ばれる円盤を常時回転させ、その回転エネルギーを蓄積し、停電時には蓄えたエネルギーを電力に変換する仕組みです。この方式には、電力を一度回転エネルギーに変換することで、不安定な電源を安定化させる効果もありました。

1960年代に入ると、半導体素子を活用した「静止型UPS」の製品化が始まりました。フライホイールを必要としないため、それまでのロータリーUPSと比較して小型化が容易になりました。1980年代にはパワートランジスタの登場により、さらなる効率化・小型化が進みます。さらに、1990年代には、パワートランジスタの10倍以上の高速動作が可能なIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が採用されるようになり、それまで難しかったPWM(パルス幅変調)制御が可能になったことで、UPSの効率が飛躍的に向上しました。

現在では、商用電源からの給電を行いながら、内蔵バッテリーに蓄電する「静止型UPS」が主流となっています。これまでUPSに搭載されるバッテリーとしては鉛蓄電池が一般的でしたが、近年ではリチウムイオン電池を使用した製品も登場し、よりコンパクトで高性能なUPSの開発が進められています。

鉛蓄電池 は、充電可能な二次電池の中でも特に古い歴史を持つ電池であり、自動車のバッテリーとして広く使用されています。その大きな特長は、原料となる鉛の調達が比較的容易で、リサイクルが可能なため、製造コストが低いこと にあります。さらに、長年にわたり研究・開発が進められており、豊富な製品実績を持つことから、高い信頼性が確立されています。しかし、電池自体の重量が重く、小型化が難しい という課題もあります。 一方、リチウムイオン電池 が製品化されたのは1990年代に入ってからであり、鉛蓄電池と比べると歴史は浅いものの、エネルギー密度が高く、小型化が容易 という特性から、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末向けに急速に普及しました。リチウムイオン電池はリサイクルができず、原料資源も鉛に比べて希少なためコストは比較的高価 ですが、電池の残量や充電状態を監視しやすい というメリットがあります。 UPSにおいても、リチウムイオン電池を搭載したモデルは増えており、従来の鉛蓄電池モデルと比較すると、本体サイズが約半分になり、バッテリー寿命も2倍に延びる など、扱いやすさが向上しています。

バッテリーはUPSの代わりになるのか?

一般的なノートパソコンにはバッテリーが搭載されており、これがUPS(無停電電源装置)と同じような役割を果たしていることをご存じでしょうか。

ノートパソコンをACアダプタに接続して使用している際に停電が発生すると、コンセントからの給電が停止します。通常、電源供給が止まるとパソコンは強制的にシャットダウンしてしまいますが、バッテリーが搭載されていることで、停電時でも自動的にバッテリーへ切り替わり、動作を継続できるのです。さらに、バッテリーの残量が少なくなると自動的に節電モードへ移行し、バッテリーが完全に消耗する前に正常にシャットダウンできるようになっています。

そのため、ノートパソコンの場合、ACアダプタを接続して使用している状態であれば、内蔵バッテリーがUPSと同じような役目を果たしているといえます。ただし、リチウムイオン電池の寿命を延ばすために、バッテリーを取り外してACアダプタのみで使用するケースもあります。しかし、この方法では停電時のデータ喪失や機器の故障リスクが高まるため、UPSの代わりとしての機能を失ってしまう点には注意が必要です。

NASの内蔵バッテリーとUPSの違い

ノートパソコンと同様に、ネットワークストレージ(NAS)の中には大容量の内蔵バッテリーを搭載しているモデルもあります。これらのモデルは停電が発生した際に、一時的に内蔵バッテリーで稼働し、データの喪失を防ぐ仕組みを備えています。しかし、バッテリーが尽きるとNASの動作は停止してしまうため、あくまで短時間の緊急用電源に過ぎません。長時間の停電に備えるには、やはり専用のUPSを導入する方が確実です。

災害時の備えとして注目されるポータブル電源

UPSとは異なりますが、**近年注目を集めているのが「ポータブル電源」**です。これは、スマートフォン用のモバイルバッテリーよりも大容量の電力供給が可能な装置で、キャンプや車中泊、さらには災害時の非常用電源として活用されています。

ポータブル電源には、ACアダプタやUSB端子を複数接続できるモデルが多く、電源のない場所でもパソコンやスマートフォンの充電が可能です。さらに、電気毛布や小型家電の長時間使用にも対応した大容量モデルも販売されています。ただし、ポータブル電源はUPSのように停電時に自動で電力を供給する機能はないため、データ喪失を防ぐ用途には適していません。あくまで災害時の非常用電源としての備えとして活用するのが適切でしょう。

UPS導入で電源トラブルによるリスクを軽減

このように、停電時のデータ喪失を防ぐための手段はいくつかあります。ノートパソコンのバッテリーやNASの内蔵バッテリー、さらにはポータブル電源など、それぞれにメリットがありますが、どれも根本的な解決策とはなりません。

特に、台風や地震などの自然災害により長時間の停電が発生した場合、電力供給が途絶えればどんな機器もいずれは動作不能になります。また、雷による電圧異常で機器が故障するケースも少なくありません。実際に、停電後に機器が正常に動作しなくなり、データにアクセスできなくなったという相談も多く寄せられています。

こうしたリスクを回避するためには、UPSの導入が最も有効な対策といえるでしょう。UPSは、停電時の瞬時の電力供給だけでなく、電圧異常から機器を保護する機能も備えており、安定した運用を支援します。不測の事態に備え、UPSの導入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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