HDDの種類とインターフェースについて|データ復旧
目次
知っておきたいパソコン基礎知識
ハードディスクにはさまざまなタイプが存在し、その長い歴史の中で多くの規格が登場してきました。一部の古い規格は現在ではほとんど使われておらず、実際に目にする機会も少なくなっています。たとえば、1980年代から1990年代にかけて普及したST506やESDIなどの規格は、すでに市場から姿を消しています。
近年では、ハードディスクの主流規格としてSATA(Serial ATA)が一般的ですが、高速かつ高信頼性を求められるエンタープライズ用途ではSAS(Serial Attached SCSI)が依然として広く利用されています。このページではハードディスクの種類とインターフェイスについて詳しくご紹介させていただきます。
ハードディスクの種類についてハードディスクの接続インターフェイスには、大きく分けて「SCSI(Small Computer System Interface、スカジー)」系と「ATA(Advanced Technology Attachment、エーティーエー)」系の2種類があります。初期のハードディスクは主にSCSI系が採用されており、その高い信頼性と安定性から、現在でもサーバーや業務用システムで広く使用されています。一方、一般ユーザー向けのハードディスクの普及に大きく寄与したのは、価格が安く、取り扱いが簡単なATA系の登場です。
現在では、ATA系から発展したSATA(Serial ATA)が主流となり、パソコンや家庭用ストレージデバイスで広く使われています。また、SCSI系も進化を遂げ、SAS(Serial Attached SCSI)としてサーバーやエンタープライズ用途で高い信頼性を維持しています。
データ保存や復旧を考える際には、これらのインターフェイスの違いや特徴を正しく理解することが重要です。特に、故障時のデータ復旧方法や対応可能なインターフェイスの確認は、事前に把握しておくことが望ましいでしょう。
世界で最初のハードディスクについて
世界初のハードディスクドライブ(HDD)は、1955年にIBM社が開発した「IBM 350 RAMAC」に搭載されました。このHDDは「ディスクパック式」と呼ばれ、24インチ(約60cm)の大きなディスクを50枚も内蔵し、高さは約2メートルにも達する巨大な装置でした。しかし、記憶容量はわずか5MBで、現代のHDDと比較すると数十万分の一の容量に過ぎません。それでも、当時としては画期的な技術であり、従来のパンチカードや磁気テープに代わる革新的なデータ保存手段として高く評価されました。
IBM 350は、任意のデータに直接アクセスできるランダムアクセス方式を採用しており、データ処理速度が大幅に向上しました。この技術により、企業の会計処理や在庫管理など、大量のデータを扱う業務で大きな効率化が図られました。また、ディスクパックが交換可能な規格の登場は、後にリムーバブル方式のハードディスク、いわゆる外付けHDDの開発にもつながりました。
1970年代初頭には、IBMが「IBM 3340」を発表します。この製品は、それまでのハードディスクとは異なり、ディスクの交換ができない密閉構造を採用していました。この設計により、データの読み書きを行うためのヘッドもディスク内に内蔵され、外部からの塵や異物の侵入を防ぐことが可能になりました。この「ウィンチェスター型」と呼ばれる構造は、高い信頼性と大容量化を実現し、現在のHDDの基本的な設計の礎となっています。
初期のHDDは巨大で高価な装置でしたが、これらの技術革新が積み重ねられることで、ストレージデバイスは急速に進化を遂げました。現代では、手のひらサイズのHDDやSSDが数テラバイトの容量を持つまでに至り、デジタル社会を支える重要な基盤として広く利用されています。
SASIとATAの規格化の歴史
IBM 3340の発売と同時期、IBMのディスクストレージ製品部門を率いていたアラン・フィールド・シュガート氏はIBMを退社し、新たに「シュガート・アソシエイツ(Shugart Associates)」を設立しました。この会社はフロッピーディスクの開発で成功を収めましたが、シュガート氏はさらなる技術革新を目指し、低価格なハードディスクの製造に着手します。しかし、この方針を巡って投資家と対立した結果、同社を離れることとなります。
その後、シュガート氏は「シュガート・テクノロジー(Shugart Technology)」を設立します。この会社は、商標権の問題から後に「シーゲイト・テクノロジー(Seagate Technology)」と改称されました。シーゲイトは、世界初の5.25インチのPC用HDDである「ST-506」を1980年に開発し、これがハードディスク規格の標準化に大きな影響を与えました。この製品はSASI(Shugart Associates System Interface)と呼ばれるインターフェイス規格を採用しており、これが後のSCSI(Small Computer System Interface)の基盤となりました。
さらに、ATA(Advanced Technology Attachment)の規格化は、IBM PCの普及とともに進展しました。ATAは低コストでシンプルな構造が特徴で、家庭用パソコンや小型サーバーでのデータストレージの標準規格となります。ATAは後に進化し、より高速なデータ転送を可能にするSATA(Serial ATA)として広く普及しました。
シーゲイト・テクノロジーは現在でもHDD業界のリーダー的存在であり、当時の規格化の取り組みは、ストレージ技術の進化と広範な普及を後押ししました。また、SCSIやATAといった規格は、現代のストレージデバイスやシステム設計にもその影響を強く残しています。
HDDメーカーSCSIとATAの違い
ハードディスクドライブ(HDD)の規格として、SCSI(Small Computer System Interface)とATA(Advanced Technology Attachment)の2つが誕生しました。両者にはさまざまな違いがあり、それぞれ異なる用途や特徴を持っています。以下に、それぞれの主要な違いを詳しく解説します。
1. データ転送速度の違い
SCSIはATAよりも高速なデータ転送が可能で、特に大容量データを扱う場面でその利点が発揮されます。その後、ATA規格も改良が重ねられ、SATA(Serial ATA)として転送速度が向上しましたが、SCSIは常に高い転送性能を維持し、より高速なデータ処理を必要とする環境に適しています。
2. ケーブル長の違い
SCSIは最大12メートルのケーブルが使用可能で、複数の外部デバイスを接続するのに適しています。一方、ATAは最大ケーブル長が0.46メートルと短いため、外部接続には不向きで、主に内蔵ドライブ専用の規格として使われてきました。この違いにより、SCSIはより広範囲での接続や複雑な機器構成が可能となります。
3. 同時接続可能なデバイス数
ATAでは、1本のケーブルに接続できるデバイスは最大2台までに制限されています。一方、SCSIは1つのバスに最大16台(拡張によりそれ以上も可能)のデバイスを接続でき、サーバーや大規模なストレージシステムでの利用に適しています。
4. コストの違い
SCSI製品は高性能で汎用性が高い反面、コストが高くなる傾向があります。これに対し、ATA製品は機能が限定的である分、製造コストを抑えられ、価格も比較的安価です。そのため、ATAは個人ユーザーや家庭用パソコン向けのストレージとして広く普及しました。
用途の違い
SCSI系のHDDはその高い信頼性と拡張性から、サーバーやRAID構成のHDDとして主に利用されています。一方、ATA系はコストの安さと取り扱いの手軽さから、デスクトップパソコンや家庭用ストレージとして広く使われてきました。用途に応じたこれらの選択肢は、現在のストレージ技術にも大きな影響を与えています。
RAIDについて新規格の台頭
近年、ストレージインターフェイスは大きな進化を遂げています。SCSIから派生したSAS(Serial Attached SCSI)や、ATAの後継であるSATA(Serial ATA)などが登場し、性能やコスト面で多様な選択肢を提供しています。これらの進化は、各規格の特徴を際立たせ、現代のストレージ技術の基盤を形作っています。
ATA規格は当初からコストの低さを特徴としており、ANSIによる規格化が進むにつれて改良が加えられました。たとえば、ATA-1を高速化したATA-2や、リムーバブル接続メディアに対応したATA-3が登場し、一般的なPCに広く普及しました。また、ATA規格には、HDD以外のデバイス、例えばCDドライブを接続するためのATAPI(ATA Packet Interface)が追加され、多様な機器との互換性を実現しました。
2000年には、ATA規格をさらに発展させたSATAが登場しました。この規格はパラレル方式からシリアル方式に移行し、より細いケーブルの使用を可能にすることで、接続の利便性とエアフローの改善を実現しました。これにより、デスクトップPCからノートPC、さらにはサーバー用途まで幅広い場面で活用されるようになりました。
一方、SCSI系では1992年にANSIによって「UltraSCSI(ウルトラスカジー)」規格が制定され、転送速度の大幅な向上と最大16台のデバイス接続が可能となりました。その後、2003年にSASが発表され、SCSIの信頼性を継承しつつ、シリアル方式を採用して接続ケーブルを細くすることで、より柔軟なシステム構築が可能となりました。
最新規格とトレンド
SATAは、現在最も一般的に利用されているハードディスクインターフェイスとして広く普及しています。その低価格と省電力を追求した設計により、パソコンだけでなく、テレビ、ビデオカメラ、ゲーム機といった多様な分野の機器にも採用されるようになりました。また、SATA規格には外付けドライブ用として「eSATA(External Serial ATA)」も定義されています。しかし、USB規格という強力な競合が存在したため、eSATAは広く普及することはありませんでした。
一方、SAS(Serial Attached SCSI)接続のハードディスクは、高い性能と信頼性を備えていますが、その分価格が高いため、個人向け製品よりも企業向けのサーバーやストレージシステム、高機能な業務用機器で使用されるケースが多いのが特徴です。
近年では、従来のHDDに代わる記憶媒体として、フラッシュメモリを搭載したSSD(Solid State Drive)の採用が増加しています。SSDは発売当初、非常に高価で一部のハイエンド機器に限られていましたが、多くのメーカーが製品を開発・販売するようになるにつれて価格が下がり、現在ではノートパソコンの記憶媒体として標準的に搭載されることも一般的になっています。SSDの高速なデータアクセスと耐衝撃性は、特にモバイルデバイスでの利用において大きな利点となっています。
M.2(エムドットツー)
M.2は、mSATAの後継規格として誕生したストレージインターフェイスです。この規格は、mSATAよりもさらに小型化されており、ノートパソコンやタブレットなどのモバイルデバイスに最適な形状を備えています。その結果、これらのデバイスの薄型化や軽量化に大きく貢献しました。
mSATAの後継規格であるにもかかわらず、M.2とmSATAの接続端子には互換性がありません。そのため、M.2を利用するには、マザーボード側に専用の接続端子が必要です。また、M.2のメディアにはさまざまなサイズや端子形状が存在し、用途やデバイスに応じた選択が求められます。「2242」や「2280」といったサイズ表記は、メディアの幅と長さを示しており、これらの仕様は規格によって決められています。
さらに、M.2は転送速度にも多様性があります。SATAインターフェイスを採用したタイプは従来のSATA接続SSDと同程度の速度ですが、NVMe(Non-Volatile Memory Express)インターフェイスを採用したタイプでは、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)を利用することで圧倒的な速度を実現します。このように、同じM.2規格でも使用されるインターフェイスによって性能に大きな違いがあるため、使用目的に応じた選択が重要です。
M.2の利点はその汎用性にもあります。ストレージとしてだけでなく、Wi-FiやBluetoothなどのモジュールにも使用され、非常に幅広い用途で採用されています。最近では、ハイエンドのパソコンやデータセンター向けシステムにもNVMe対応のM.2が使われるなど、需要が拡大しています。
データスマートではこのページで解説させていただいた、様々な規格のハードディスクやSSDのデータ復旧に対応しております。