高温・低温環境でのPCの故障リスク

PCの内部にある部品は、電流が流れることで使用中に熱を発します。そのため、パソコンの内部温度は通常、室温よりも高くなります。例えば、室温が25℃であっても、CPUの表面温度は50℃を超えることがあり、高温にさらされやすいです。そのためファンがついており、排熱することで故障することを防いでいます。

高温環境での悪影響

さらに、室温が高かったり、通気性が悪い環境で使用すると、パソコン内部の温度はさらに上昇し、部品に悪影響を与える可能性があります。パソコンを適正な温度を超えて稼働させると、部品の変形や電流の流れの異常など、さまざまな問題が発生しやすくなります。これらの問題が蓄積すると、最終的には故障に繋がり、データ復旧が必要になる状況を引き起こすこともあります。

特にHDD(ハードディスク)は、温度が高くなると故障率が高くなることが調査結果で示されています。オンラインストレージサービスを提供するBackblazeによると、HDDの温度と故障率には明確な相関があり、温度が高いほど故障リスクが増大することが確認されています。

一方、低温環境でも問題が生じます。電源ユニットやマザーボードに搭載された電解コンデンサは、温度が低すぎるとその機能が低下し、パソコンが起動しにくくなることがあります。また、HDDは内部のモーターで駆動されますが、寒い環境ではモーターの軸受に使用される潤滑油の粘度が高くなり、駆動に支障が出ることがあります。このような低温による影響も、パソコンの故障につながるリスクがあるため注意が必要です。

適切な温度管理と定期的なメンテナンスを行い、パソコンを過酷な温度環境にさらさないようにすることが、長期的な安定稼働を維持するために重要です。CPUが壊れたとしてもデータ復旧できる可能性は残されていますが、HDDが壊れてしまうことがあります。また、PCの内蔵メモリがSSDの場合にはCPUが壊れることでデータ復旧が不可能となる致命傷を負っている可能性もあります。

SSDは発熱量が少ない

HDDと比較すると、SSD自体の発熱量が少ないため、冷却機構の重要性が相対的に低くなる傾向があります。そのため、SSD搭載PCでは冷却に対する設計が簡素化されていることが多いです。

主な理由

  1. 発熱量の違い:
    • HDDは、ディスクの回転や読み書きヘッドの移動などの機械的動作が発熱の原因となります。これにより、HDDは比較的高い温度に達することがあり、適切な冷却が必要です。
    • SSDは、フラッシュメモリを利用しているため、可動部品がなく、電力消費と発熱量がHDDに比べて低く抑えられています。このため、冷却に対する依存度が少ないです。
  2. 冷却設計の違い:
    • SSDは発熱量が少ないため、一般的に専用の冷却機構を持たないことが多いです。ノートPCや小型PCでは、HDDに比べて冷却の必要性が低いため、全体的な冷却設計も簡素化される場合があります。
    • ただし、高性能なNVMe SSDや、高負荷な作業(例:大容量データの連続読み書き)を行う場合は、発熱が増加することがあります。このため、一部の高性能SSDにはヒートシンクや専用冷却機構が必要になることもあります。
  3. PC全体の冷却:
    • SSD搭載PCでは、ストレージ部分の発熱が少ないため、全体的な冷却設計がシンプルになる傾向があります。しかし、CPUやGPUなど他の部品の発熱は無視できないため、PC全体の冷却機能は引き続き重要です。

そのため、SSDを搭載したPCは、HDD搭載PCほど冷却設計に依存していない場合が多いものの、特定の状況下では冷却が必要となるケースもあります。

HDDは高温が苦手

ほとんどのHDDメーカーにおいても、HDDの適切な動作温度範囲や冷却の重要性に関する考え方は共通しています。一般的に、HDDメーカーはHDDにとって高温は敵であると言っています。

  1. 動作温度範囲: 多くのHDDは、5℃から50℃程度の温度範囲で正常に動作するように設計されています。一部の最新モデルでは、最大温度がさらに高く設定されている場合もありますが、これらの範囲を超えると、ドライブの寿命や信頼性に影響を与える可能性が高くなります。
  2. 冷却と通気性の重要性: すべてのHDDは適切な冷却と通気性が確保された環境で使用されるべきです。エアフローが不十分な場合、ドライブが過熱しやすくなり、故障率が高まります。メーカーは通常、パソコンのケースやエンクロージャーが十分な冷却能力を持つようにすることを推奨しています。
  3. 高温の影響: 高温環境での動作は、HDDの故障率を高めるリスクがあります。このため、HDDの温度管理は非常に重要です。特にサーバーやストレージシステムなど、多数のHDDを搭載するシステムでは、冷却システムの適切な設計が欠かせません。
  4. 低温環境の影響: 低温環境では、HDD内部の潤滑油の粘度が高くなることや、電子部品の性能が低下することがあります。これにより、HDDが正常に動作しない可能性があり、特に寒冷地での使用や保存時には注意が必要です。

まとめ

パソコンが高温になるとキーボードの文字が溶けてしまうこともあります。特に2020年以降、薄型のPCがほとんどでSSDを搭載していますが、SSDは発熱量がHDDと比べて多くはありません。熱によって壊れるトラブルよりは誤って削除してしまったりすることによるトラブルの方が多いかもしれません。SSD搭載のPCが突然動かなくなってしまってもデータ復旧できる見込みはありますので、データスマートの初期調査をご利用ください。

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