テープメディア(磁気テープ)の記録方式とバックアップ

磁気テープでのバックアップは磁気テープをカートリッジに収め、バックアップの記録媒体として使用する方式のことを指します。かつて、スマートフォンや携帯電話が普及する前、音楽はカセットテープで聴いていた時代がありましたが、テープバックアップに使用される磁気テープも同じ技術を利用しています。

この技術は1950年代に登場し、現在でもレガシーなシステムのデータバックアップにおいて欠かせない存在となっています。あなたが生まれる前から存在していたテクノロジーかもしれませんが、実は今誰もが使っているサービスやツールの裏側を支え、データ保存の手段として重要な役割を果たしています。

テープ規格について

データ保存用のテープデバイスは、長い歴史を持ち、さまざまな規格が登場してきました。その種類は多岐にわたりますが、ここでは代表的なメディアに絞って簡単に解説します。

LTO(Linear Tape-Open)
LTOは、Seagate、HP、IBMの3社によって策定されたオープンフォーマットのテープ規格です。従来の主流であったDLTやAITに対抗するために開発され、法的な制約がないことや汎用性・信頼性の高さが評価され、現在では業界標準の規格として広く採用されています。

初代LTO(LTO1)は2000年に発売され、それ以降数年おきにバージョンアップが行われています。最新の第8世代(LTO8)は2017年に発表されました。LTOのロードマップでは、12世代目(LTO12)までの開発が予定されており、保存容量は192TB(圧縮時は480TB)に達する予定です。

LTOテープは、約30年の保存寿命を持つとされ、ドライブの互換性も考慮されています。具体的には、2世代前のテープを読み込むことができ、1世代前のテープには書き込みが可能です。この互換性により、長期にわたって安定したデータ保存が可能となっています。

テープドライブはシングルリール構造を採用しており、テープの巻き取りはドライブ側で行われます。この設計により、限られたスペースでの保存データ量が最大化され、保管場所の確保においても優れた効率性を発揮します。データはテープの走行方向に沿って直線的に記録されるため、高速な読み書きが可能であり、また耐久性にも優れています。さらに、テープの読み出し時にヘッドやテープにかかる負荷が少ない構造となっているため、テープの寿命が長くなるという利点もあります。

IBM Enterprise Tape (3480/3490/3490E, 3592/TSシリーズ)

IBMのEnterprise Tapeシリーズは、リニアテープ技術を基本としつつ、独自の進化を遂げたエンタープライズ向けの製品群です。2018年に発売された3592ファミリのTS1160が最新規格となっており、読み書き速度の向上に加え、エラー訂正機能や誤り訂正機能が高度に実現されていることが評価されています。

DLT (Digital Linear Tape)

Digital Linear Tape(デジタル・リニア・テープ)は、1984年にDEC社が同社のMicro VAX IIワークステーション向けに開発したものが最初です。DLTは1/2インチ幅の磁気テープをカートリッジに納めたもので、1994年にクアンタム社がDEC社のテープ部門を買収し、その後も開発が継続され、上位互換規格のSuper DLT(スーパー・ディーエルティー)も登場しました。しかし、LTOに取って代わられ、2006年に発売されたDLT-S4以降、新規製品は発表されていません。

AIT / AIT2 / AIT3

Advanced Intelligent Tape(アドバンスド・インテリジェント・テープ)は、1996年にSONYが発売したヘリカルスキャン方式のテープメディアです。AIT2からAIT5、さらにSAITと開発が進められ、DLTと同様に一時期は業界標準規格の一つでしたが、LTOに取って代わられ、現在では新規規格は登場していません。

ヘリカルスキャン方式はテープの走行方向に対して斜めに傾けられたヘッドでデータを記録するため高密度な記録が可能ですが、ヘッドやテープへの負荷が大きく、定期的なヘッドの交換やクリーニングが推奨されていました。

DDS/DAT

Digital Data Storage(デジタル・データ・ストレージ)は、音楽のデジタル録音用に開発されたDAT(Digital Audio Tape)を基に、SONYとHPが共同で開発した規格です。記録装置がDDSで、記録媒体がDATとなります。1989年に登場した「DDS-1」から始まり、1999年の「DDS-4」、2003年の「DAT72」、2009年の「DAT320」へと発展しましたが、2012年を最後に新規規格の発表はなく、開発団体も解散しています。

QIC / mini-QIC (Quarter-Inch Cartridge)

Quarter-Inch Cartridge(クオーターインチ・カートリッジ)は、1972年に3M社が開発した規格です。1993年には8mm幅のQIC-Wide(クイックワイド)へと発展しました。日本ではあまり普及していませんが、海外では多くの規格があります。テープカートリッジには、5.25インチのベイに収まるデータ・カートリッジと、3.5インチのベイに収まるミニ・カートリッジがあります。

その他の規格

  • Exabyte 8mm: 8200/8500/8700シリーズ
  • StorageTek: 9840/9940シリーズ
  • DEC: TK / VXA / ADR

リニア方式とヘリカル・スキャン方式の比較

リニア・サーペンタイン方式
テープの走行方向の切り替え時にヘッドが上下にスライドしてデータを記録します。この方式にはDLT/SDLT、LTO Ultrium、IBM 359x/TS1120、StorageTek Tシリーズなどが含まれます。

ヘリカル・スキャン方式
ヘッドが高速で回転しながらデータを記録する方式で、AIT、DDS、DTF、8mmなどがこれに該当します。

リール構造の比較

ワン・リール型
テープが外部へ引き出される構造で、DLT/SDLT、Ultrium、IBM 3490/3590、StorageTek T9940などがこれに該当します。

ツー・リール型(テープを引き出すタイプ)
テープが外部へ引き出され、ドラム・ヘッドに巻きつく構造で、AIT、DDS、DTFなどがあります。

ツー・リール型(テープを引き出さないタイプ)
テープ・パスがカートリッジ内に閉じられており、アクセスが速い構造で、QIC、IBM 3570、StorageTek T9840などが該当します。

テープに保存されたデータの活用方法

1. テープデータのカタログ作成
ビッグデータやデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まる中、過去にバックアップされたテープに何が保存されているか分からない、またはそのテープを読み出すためのドライブが手元にない、といったケースもあります。こうした場合、テープに保存されているデータをカタログ化することで、アーカイブデータの効果的な管理が可能になります。これにより、不要なデータを分離し、必要なデータを迅速に活用できるようになります。

2. テープデータの統合と取り出し
異なる規格やバックアップソフトウェアで保存されたテープデータが多数あり、どのように取り扱えば良いか分からないというケースもあります。これらのデータを共通フォーマットに変換したり、複数のテープにまたがって保存されたデータを統合したり、HDDなどにコピーして簡単にアクセスできるようにすることで、データをより有効に活用できるようになります。

データの集約と取り出し
テープメディア(磁気テープ)に関するトラブルが発生した際には、データ復旧の専門家にご相談なさることをお勧めします。

テープバックアップの技術進化と展望

近年のテープバックアップ技術は、AIや機械学習を活用したテープライブラリの最適化が進んでおり、効率的なデータ管理が可能になっています。また、最新のテープメディアは100年以上の保存が可能とされ、アーカイブ用途にも非常に有効です。さらに、テープはユーザーからの要求がない限り読み書きが不要なため、電力消費を抑えられることから、グリーンITやTCO削減の観点でも再評価されています。

IT環境において、データの保護は「常に取り出せること」だけでなく「決して失わないこと」が求められます。そのため、データ消失を防ぐ方法としてバックアップが重要です。中でもテープバックアップは、長期保存、大容量、低コストといった条件を満たし、長年にわたって使用されてきた信頼性の高いバックアップ手法です。

テープは可搬性があるため、災害対策として遠隔地にフルバックアップを保管するなど、オフライン管理に最適です。また、必要なデータを長期間アーカイブとして保存する用途にも適しています。

しかし、テープドライブでは磁気ヘッドにゴミが付着する可能性があり、定期的なクリーニングが必要です。さらに、複数のテープを交換して使用するライブラリ装置は機械的な部分が多いため、定期的なメンテナンスが欠かせません。

まとめ

バックアップは欠かすことのできない作業ですが、重要なのはリストア(復元)です。記憶媒体が壊れてしまってデータがなくなって困ってしまってもデータがリストアできることがバックアップの価値です。このようにテープメディアも含めたデータ保管をしている品質の高いクラウドサービスの利用は費用は発生しますが、価値があると考えられます。バックアップできていなかったデータの復旧はデータスマートにご相談ください。

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