USBメモリのよくある障害

フラッシュメモリを搭載した記憶メディアは、環境に左右されず手軽に利用できることから、現在では広く普及しています。デジタルカメラや携帯電話、ゲーム機などで使用される「SDカード/microSDカード」や「コンパクトフラッシュ」、USBコネクタを備えたスティック状の「USBメモリ」などが、その代表的な規格です。

これらのメディアは、汎用性が高く、コストも比較的安いといった多くのメリットを持っていますが、一方で特性上の弱点やデメリットも存在します。ここでは、データ復旧に関連する破損や障害の発生について説明します。

物理的な制約

書き換え回数の制限
メモリの書き換え回数には物理的な限界があり、メーカーが公表している数値では通常30〜100万回程度とされています。これは、書き込み時に電子が酸化膜を貫通し、それが劣化することで生じます。メモリセル単体の書き換え寿命は数百から数万回程度とされていますが、実際には、メモリへの書き込みが毎回異なる物理アドレスに行われることで、劣化が全体に均等に分散されるため、メモリ全体の寿命が30〜100万回程度となります。

データ保持期間
フラッシュメモリは、電子を用いて情報を記憶する構造上、データの保持期間にも限界があります。最適な条件下(例えば、書き換えが行われていない、温度が安定しているなど)でも、データの保持期間は約10年程度とされています。実際の使用環境では、この保持期間はさらに短くなる可能性があり、動作保証期間を2〜3年とする製品も存在します。また、書き込みを繰り返すことで、メモリセルの保持期間も短くなるため、再利用やリサイクルには注意が必要です。

脱着回数の制限
USBコネクタの脱着回数も制限があります。USBメモリに使用されるA端子では、通常約1,500回程度が上限とされています。コネクタ部分にはメッキが施されていますが、摩擦による消耗が進むと接触不良が発生し、正常な読み書きができなくなるリスクが高まります。1,500回を超えた時点ですぐに壊れるわけではありませんが、故障のリスクが増加します。

物理的な破損

USBコネクタの破損
USBメモリのコネクタ部分は、基板との接点が非常に脆く、衝撃を受けたり、物にぶつかったりすると破損しやすいです。たとえ内部のコントローラーチップやメモリチップが無事でも、コネクタが壊れてしまうとデータにアクセスできなくなるため、取り扱いには注意が必要です。また、HDDとは異なり、USBメモリには駆動部がないため一見すると衝撃に強そうに思えますが、内部の「水晶振動子」が衝撃に弱いです。そのため、落下などの強い衝撃を受けると破損することがありますので、気を付けましょう。

過電圧などによる破損
フラッシュメモリは常時接続されているため、過電圧などの電気的トラブルが発生すると、影響を受けやすくなっています。また、静電気によるダメージも無視できません。最近のメディアには静電気対策が施されているものが多いですが、間接的に影響を受けることもあります。基板やコントローラーチップが破損しても、メモリチップが無事であればデータの復旧は可能です。ただし、コントローラーを介さずにデータにアクセスするには特殊なアルゴリズムが必要なため、簡単にデータを取り出すことはできません。こういった物理的な破損からのデータ復旧が必要な場合は、専門のデータスマートにご相談ください。

論理的な障害

現在、フラッシュメモリを組み込んだ記憶メディアのほとんどで、FATフォーマットが採用されています。これは、開発コストを抑え、汎用性を高めるための選択肢と考えられますが、FATフォーマットには「ジャーナリング」という機能が備わっていません。ジャーナリングは、ファイルフォーマットの破損を防ぐための機能ですが、これがないため、読み書き中に突然メディアを取り外すと、ファイルフォーマット全体が簡単に破損する可能性があります。

特にUSBメモリは、手軽に抜き差しができるため、不注意な操作によるファイルシステムの破損リスクが高い点に注意が必要です。

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