フォーマットと削除の違い

削除について

「削除」とは、ファイルやフォルダをシステムやデバイスから取り除き、データをユーザーが使えない状態にすることです。しかし、削除の方法や種類により、データの残存リスクや復元のしやすさは異なります。ここでは、代表的な削除の方法とその特徴について解説します。

1. 通常のファイル削除

  • 概要: オペレーティングシステム(OS)上でファイルやフォルダを削除する一般的な操作で、Windowsでの「ゴミ箱に移動」やmacOSの「ごみ箱へ移動」などがあります。この操作により、ファイルはシステム上見えなくなりますが、実際にはストレージ上に残り、簡単に復元できます。
  • 特徴: 一時的な削除や整理に便利ですが、重要データの削除には適していません。あくまでもインデックスからの削除であってドライブ上にデータが残っていることがほとんどです。

2. シフト+デリート(Shift + Delete)

  • 概要: Windowsの「シフト+デリート」キーや、macOSの「即削除」コマンドを使うと、ファイルをゴミ箱に移動せずに直接削除できます。これにより、ゴミ箱を経由せずデータが消えるため、見かけ上は即座に削除されたように見えます。
  • 特徴: ゴミ箱からの復元を防ぎますが、ファイルシステムからのみデータのポインタが消されるため、復元ソフトウェアで簡単に回復できます。

フォーマットについて

フォーマットとは、データストレージデバイス(ハードドライブ、SSD、USBドライブ、SDカードなど)においてデータを保存するためのファイルシステムを整理し、新たなファイルシステムを利用した書き込みを可能にすることです。フォーマットを行うことで、デバイス上のデータは消去され、新しいファイルシステムが構築されます。

ただ、フォーマットと言ってもいくつも種類がありますので、その違いをまずはご紹介しながらフォーマットと削除の違いを解説させていただきます。

フォーマットの種類

フォーマットにはクイックフォーマット、フルフォーマットがあります。過去にはローレベルフォーマットと言われるハードディスクの製造過程で行われるドライブの初期化を行うものもありましたが、基本的に現在使われているのは2種類です。

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フォーマットには物理フォーマットと論理フォーマットの2つがあります。論理フォーマットの場合には、フォーマットを行った後でもデータの上書きや書き込みが保存箇所にされていなければデータ復旧の可能性が残されています。

1. クイックフォーマット(Quick Format)

  • 概要: クイックフォーマットは、ファイルシステムのメタデータのみを削除し、データ領域はそのままにします。これにより、フォーマットプロセスは迅速に行われますが、データは物理的にはディスク上に残ります。専門業者によるデータ復旧サービスを利用すれば、データの回復が可能です。
  • 適用例: 新しいドライブの初期設定、または既存のデータの迅速な削除が必要な場合に用いられますが、セキュリティが重視される状況では推奨されません。

2. フルフォーマット(Full Format)

  • 概要: フルフォーマットは、クイックフォーマットとは異なり、データ領域も新たに書き換えることで、以前のデータを完全に消去します。このプロセスには時間がかかりますが、データの安全性が高まります。
  • 適用例: 古いデータを安全に消去したい場合や、ドライブのエラーをチェックして修復する場合に使用されます。
注意

フォーマットは便利なツールですが、データの完全な消去を保証するものではない場合があります。特に、クイックフォーマット後のデータは復旧可能であるため、セキュリティを重視する場合はデータ消去ソフトウェアを使用して物理的にデータを上書きすることをお勧めします。

フォーマット事例

事例 1: パソコンのOS再インストール

  • 概要: 長期間使用したパソコンで動作が遅くなり、システム全体をリフレッシュするためにOSを再インストールすることがあります。
  • フォーマットの役割: 再インストール前に、Cドライブ(システムドライブ)をフルフォーマットすることで、古いデータや不要なファイルを一掃し、新しいファイルシステムを整備します。これにより、OSはクリーンな環境で動作しやすくなります。

事例 2: 外付けハードドライブの再利用

  • 概要: データバックアップやファイル転送用の外付けハードドライブは、時折中身をクリアして別の用途に利用することがあります。
  • フォーマットの役割: クイックフォーマットでドライブ内のファイルシステムをリセットし、新しいバックアップやファイル保管に使える状態に整えます。ただし、機密性の高いデータを保管していた場合は、フルフォーマットや専用のデータ消去ソフトで上書きすることが推奨されます。

事例 3: 企業のデータ移行

  • 概要: 企業で使用する大量のデータを新しいシステムに移行する際、旧システムのストレージデバイスを再利用することがあります。
  • フォーマットの役割: 旧デバイスのデータを安全に消去するため、フルフォーマットやデータ消去ソフトを使用します。これにより、古いデータが新システムに移行されないようにし、機密情報の流出リスクを低減します。

事例 4: SSDのパフォーマンス向上

  • 概要: SSDは長期間使用していると、パフォーマンスの低下が起こることがあります。
  • フォーマットの役割: SSDのパフォーマンス向上のためにファームウェアのリセットやセキュアイレース(secure erase)と呼ばれる特別なフォーマット方法を使って、一時的に残っているデータの痕跡を除去し、効率的な書き込みを可能にします。これにより、初期の速度に近い状態で再利用できます。

データが削除されない行為

実はデータを削除したつもりが完全に消去できていない状態で専門業者のデータ復旧サービスを利用すれば復旧できる場合が以下の3つです。

1. クイックフォーマット(Quick Format)

  • 概要: クイックフォーマットは、ディスクのファイルシステム情報だけを初期化するため、元のデータ自体は上書きされずに残ります。ファイルシステムの情報がリセットされるため、システム上からはデータが見えなくなりますが、実際にはデータがディスク上に残っています。
  • 事例: USBメモリや外付けHDDに新しいファイルを保存する前に一時的なデータを消去したい場合に使われます。ただし、機密情報が含まれる場合にはこの方法は推奨されません。

2. ファイル削除

  • 概要: 一般的なファイル削除(ゴミ箱への移動や、直接削除する「シフト+デリート」など)では、ファイルシステムからデータのポインタが削除されるだけで、実際のデータはそのままディスク上に残っています。専用のデータ復元ソフトウェアで簡単に復元することができます。
  • 事例: 不要なファイルを定期的に整理してストレージ容量を空けたいときなどに使いますが、重要なファイルの機密性を確保するためには適さない方法です。

3. パーティション削除

  • 概要: パーティション削除は、ストレージデバイス上の特定のパーティションの存在を消すだけで、パーティション内のデータ自体は消えません。データ復元ソフトを使えば、削除されたパーティションからデータを回復することが可能です。
  • 事例: パーティションのレイアウトを変更する際に使われますが、データを他者に譲渡する前に完全に削除したい場合には適しません。

注意点

一般的なフォーマットや削除方法では、データが完全に消去されず残るリスクがあるため、セキュリティが重視される状況や機密データを扱う場合には、上書きやセキュアイレースなどのより安全な方法を使うことが必要です。

物理的なパーティション構造のフォーマット

物理フォーマットの概念は製造段階でしか行えない特殊なプロセスでユーザーが安全なデータ消去を行う際には、専用のデータ消去ツールやフォーマット方法を使うことが現実的です。

  • 概要: パーティションテーブル(マスターブートレコードやGPT)など、ストレージデバイス上の物理的なパーティション情報を初期化する作業です。
    • 概要: パーティションテーブル(マスターブートレコードやGPT)など、ストレージデバイス上の物理的なパーティション情報を初期化する作業です。
    • 実行方法: パーティション管理ツールを使用し、ディスク全体を削除・再分割する操作を行います。
    • 特徴: パーティション全体を再設定するため、システム全体やデータ構造が一新されますが、ディスク上のデータ自体は復元可能な場合があります。

近代的なストレージデバイスとフォーマット

現代のハードディスクドライブ(HDD)およびSSDでは、ユーザーがアクセスできる物理フォーマットはなく、ファームウェアが自動的に管理します。代わりに、次のようなデータ消去方法が一般的です。

  • セキュアイレース(Secure Erase): SSDの内部ファームウェアによってセクタごとにデータが安全に削除されます。
  • ゼロフィル(Zero Fill): すべてのデータをゼロで上書きすることで、以前のデータを上書きします。
  • パーティション削除・再設定: ディスク管理ツールを使って、物理的なパーティション構造を一新します。
【関連】データ復旧が不可能・困難な障害

データ復旧事例

https://www.datasmart.co.jp/case/
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