ハードディスク(HDD)の利用・採用技術
ハードディスクドライブ(HDD)はSSDという新たな製品が出てもなお、今でも広く使用されています。なぜ新たなストレージが登場しても利用されているのでしょうか。その理由や採用されている技術について解説いたします。
目次
ハードディスク(HDD)が利用される理由
主な理由は、そのコスト効率性、大容量性、および信頼性にあります。以下は、HDDが依然として多くの用途で好まれる理由を詳細に説明しています。
1. コスト・効率性の高さ
HDDは、SSD(ソリッドステートドライブ)に比べて、1GBあたりのコストがかなり低いです。大容量のデータストレージが必要な企業や個人にとって、費用対効果の側面は非常に重要です。低コストで大量のデータを保存できるため、一時的なデータの記録やバックアップやアーカイブ用途に特に適しています。
2. 大容量
HDDは、テラバイト(TB)単位での高容量ストレージを提供することができます。現在の技術では、HDDの方がSSDよりもはるかに大きなデータ容量をより安価に提供できます。データセンターや大規模なファイルストレージが必要な場合、HDDはその大容量性により魅力的な選択肢となります。
3. 信頼性と耐久性
長年にわたる技術の発展と実績により、HDDは高い信頼性と耐久性を実証してきました。適切に管理された環境では、HDDは長期間にわたって安定したデータストレージを提供することができます。また、HDDは長時間の使用に耐えるよう設計されており、大量のデータ読み書き操作にも適しています。
4. 柔軟性
HDDは、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、サーバー、外部ストレージデバイスなど、幅広いアプリケーションで利用できます。さまざまなインターフェース(SATA、SASなど)やフォームファクタ(2.5インチ、3.5インチ)が存在し、多様なニーズに対応できる柔軟性を提供します。
PATA(Parallel ATA)というインターフェースがありました。PC黎明期では主流でPATA技術は時間とともに進化しましたが、2000年代初頭に登場したSATA(Serial ATA)に置き換えられました。SATAはより高速なデータ転送速度、よりシンプルなケーブル管理、ホットスワップ機能など、多くのメリットがありました。これにより、PATAは徐々に市場から姿を消し、現代のパソコンではほとんど使用されなくなりました。
5. 成熟した技術
HDD技術は数十年にわたって発展してきたため、製造プロセスは最適化され、技術は成熟しています。この成熟した技術により、製品の品質と信頼性が保証されます。
プラッタ技術について
プラッタ技術は、ハードディスクドライブ(HDD)内部でデータを記憶するために使用される重要な技術です。プラッタは、HDD内にある円盤形の部品で、磁性材料でコーティングされています。この磁性材料にデータを磁気的に記録し、後で読み取ることができます。プラッタはHDDの心臓部とも言える部分で、その性能は主にプラッタの材質、サイズ、回転速度によって決まります。
それぞれについて解説してゆきます。
材質
プラッタの材質には、アルミニウム合金やガラス、セラミックなどさまざまな素材があります。ガラスやセラミック製のプラッタは、アルミニウム合金製のものよりも滑らかで平坦であり、より高密度にデータを記録することが可能です。高性能なハードディスクではより良い素材を採用している場合があり、一般的なハードディスクよりも料金が高くなっていることがあります。
サイズ
プラッタの直径は、一般的には2.5インチや3.5インチがあります。直径が大きいほど、より多くのデータを保存できますが、デバイスのサイズや消費電力の制約もあります。
回転速度
プラッタの回転速度は、一般的には5400回転/分(RPM)や7200RPM、場合によっては10000RPM以上のものもあります。回転速度が速いほど、データの読み書き速度も速くなりますが、消費電力や発熱量も増加します。
記録密度
プラッタの技術革新により、記録密度が向上しています。記録密度が高いほど、同じサイズのプラッタにより多くのデータを保存できます。最近の技術進歩により、垂直磁気記録(PMR)、エネルギーアシスト磁気記録(HAMR)、熱アシスト記録(TMR)などの新技術が開発されています。
熱アシスト記録(TMR)はまだまだ実用化はされていませんが、近い将来実用化され、ハードディスクにより多くのデータを保存できるようになる可能性を秘めています。
プラッタ技術の進歩は、HDDの容量を増加させ、データ保存コストを削減し、性能を向上させる上で重要な役割を果たしています。しかし、データの読み書き速度や耐久性の面では、固体記憶装置(SSD)に劣る面もあります。それでも、大容量データの長期保存には、今でもHDDが広く使用されています。
日本人が提唱した垂直磁気記録(Perpendicular Magnetic Recording, PMR)
- 垂直磁気記録方式(PMR)は磁化方向がプラッタの表面に対して垂直になる方式です。現在ではほとんど使用されていないLMRに比べて高い記録密度を実現でき、現在のハードディスクで採用された記録方式です。
- この方式は東芝が2005年に世界初の商品化に成功し、世界のスタンダードを作りました。この技術革新がデータの大容量化の足掛かりとなりました。